諮問委員

奥平 康弘
(東京大学名誉教授・憲法学者)

今年の米アカデミー長編記録映画賞を受賞をした映画『ザ・コーヴ』が日本の各地で上映反対に抗議にさらされ、ところによっては上映を見合わせる事態に立ちいたった。この出来事は、ぼくの追憶をさそう。ぼくは1950年代はじめ、アメリカの映画検閲をテーマに論文を書いてきた。たくさん資料に目をとおさなければならなかったが、そこにはしばしば市民たちによる映画上映ボイコットの記事が登場していた。そのころ日本にはこの種の抗議運動は見られなかったので、ぼくは、これはアメリカという特に多弁的で行動的な社会に特有な社会現象なのだろうと思い做していた。ところがいまや日本でも、映画『ヤスクニ』や『ザ・コーヴ』のプロテスト行動が例であるように、意見対立が集団行動によって可視化されるのが稀でなくなった。ぼくはこれをとても興味深い日本社会の事情変容だと思う。

旧映像倫理機構 諮問委員就任時


品田 雄吉
(多摩美術大学名誉教授・映画評論家)

さまざまな映像がいろいろなシステムで流通するようになっている。そしてその傾向はまさに止まるところなく、さらにもっともっと多様化していくのではないかと思われる。「映像倫」の仕事は、無限に溢れる映像に一定のルールを作ることにあるのだと考える。これは簡単な仕事ではないが、どのような表現も、人々の手元に届けられるとき、倫理的なルール不可欠だ。「映像倫」がしなければならない仕事は、たいへん重要だと思う。

旧映像倫理機構 諮問委員就任時


いのうえ せつこ
(フリーライター・特定非営利活動法人「あんしんネット」理事長)

幼児期に戦時下を体験した私は、「みんな一緒」と「自由にものが言えない」が大大大キライ!そんな社会を再来させないためには、「表現の自由」こそが基本。でも「表現の自由」は誰かに(国に)守ってもらうのではなく、私たち(市民)で守りたい!「映像倫」もその一つであることを確信して、お誕生をお祝いします。

旧映像倫理機構 諮問委員就任時